人と人とのコミュニケーションがあるところには、どうしてもすれ違いやハラスメント(いやがらせ)が生まれてしまうもの。セクハラ、パワハラ、モラハラなど、これまでにさまざまなハラスメントが「〇〇ハラ」と略され、言葉として定着してきました。
そして昨年以降のニューノーマルの環境下でテレワークが推進されるとともに、よく聞くようになってきたのが「テクハラ」です。
テクハラ=テクノロジー・ハラスメント
テクハラはパワハラ(パワー・ハラスメント)の一種で、「テクノロジー・ハラスメント」を略してテクハラです。
パワハラとは「職場での有意性を利用しておこなわれるいやがらせ」のことですが、テクハラは「テクノロジーに対するスキルの有無を利用しておこなわれるいやがらせ」を指しています。
ここでいうテクノロジーは、一般的な企業の場合「ITスキル」と言い換えられます。
簡単な例をあげると、業務においてITツールの使い方を教えるシーンで、「そんなことも知らないのか」といった言葉を投げかける、PCの苦手な人にPCでの業務を強要する、といった行為がテクハラに該当します。
テクハラの特徴として、年輩者から若輩者へのハラスメントだけでなく、若輩者から年輩者へのハラスメントも見られることが挙げられます。立場や地位ではなく、ITスキルの有無がその背景にあるため、このような現象が起きているのでしょう。
テクハラの具体的な事例
テクハラの具体例を確認してみましょう。以下はすべてテクハラにあたる事例です。
・コロナ禍により自宅からのテレワーク・オンライン会議が必要となり、その利用のために上司のPCのセットアップのサポートを電話でおこなった。その際に上司のIT知識が薄いことについて強い口調で言及した。
・プレゼン資料の作成を依頼した相手が資料作成用のソフトの使い方を知らなかった際、「こんなことも知らないのか」という発言をした。
・ITスキルが高くない社員に対し、それに関連して人格を否定するような発言や態度をとった
テクハラはしてはいけないが、ITスキルの習得を拒否するのも問題行為
ITツールを使いこなせない人や、IT関連に疎いという人がいるのは事実です。しかしそういった人に対して、相手よりもITスキルが高いことを有意に利用して態度に出したり、言葉にしたり、強要するといった行為はテクハラになります。
今や多くの企業では最低限のITスキルが必須で求められます。「俺はパソコンなんかわからない」「パソコンが開けないからメールは読まない」などと、最低限のITスキルを身に着けることを拒否してしまっている場合は、職務上の怠慢となる場合もあるでしょう。
しかしそれはハラスメントをしていい理由にはなりませんし、かといってテクハラを隠れ蓑にITスキルの習熟をおろそかにしてはいけないのです。