AIの技術はどんどん進歩していますが、最近こんな動画を見て衝撃を受けてしまいました。
こちらは1999年からテレビ朝日系列で放送されていたアニメ「おジャ魔女どれみ」のオープニングテーマ「おジャ魔女カーニバル!!」を、なんと伝説のロックバンド「クイーン」がライブで演奏している風に見せた動画。
もちろんこちらは現実の出来事ではありません。生成AIを駆使してフレディ・マーキュリーの歌声を再現し、YouTubeに投稿されている「おジャ魔女カーニバル!!」のライブ音源のボーカルを差し替え、それにクイーンのライブ映像を切り貼りして合わせることで本物のライブ映像風に見せているのです。
高音域を伸びやかに歌い上げる様は本物のフレディのように思えてきてしまいますし、動画もフレディの口の動きやメンバーの演奏の動きを曲に極力合わせているので余計にリアルさが増しているんですよね。制作者のこだわりがすごい。
こちらの動画は2025年1月19日現在で300万再生を超え、ネットでもどんどん話題になってきています。是非一度みなさまもご覧ください。
著作権的には大丈夫? →YouTubeは収益が分配される
これだけすごい生成AIの作品が誕生すると、いろいろと考えさせられてしまうことも多いです。
まずは著作権の問題。もちろん動画の制作者は「おジャ魔女カーニバル」の著作権を持っていないので、厳密には違反していることになるのかと思います。
ただ、YouTubeは音源の著作権管理がかなり厳重。例えば有名曲のギター弾き語り動画を投稿したりすると「この曲を歌いましたね?」と指摘が入り、収益が著作権者と分配される仕組みとなっています。
試しにYouTubeのライブ配信で「おジャ魔女カーニバル!!」のギター弾き語りをやってみましたが、素人の腕前でもこのように指摘が入り、収益が分配されました。
これは著作権を管理している団体によって対応が異なり、収益化が一切認められない場合や、動画の公開自体も認められない場合もあります。今回のクイーンの動画も著作権の管理者にしっかりと伝わり、その上で収益分配などされたうえで公開されているはず。そのため、この動画に限っては問題をクリアしているといえるでしょう。
(ライブ動画の使用に関しても正直微妙なところですが、今回は割愛します)
倫理的には疑問符がつく
もうひとつ気になるのは倫理的な問題です。
特にクイーンのフレディ・マーキュリーはもうこの世にいませんので、本人に無許可で生成された音声で、本人が歌唱した風の動画が勝手に作られてしまったということになります。
今回はフレディが亡くなられた1991年以降の日本のアニメソングを歌っているので明らかにジョークだとわかりますが、悪用すればクイーンっぽい曲をフレディのAIに歌わせて「未発表曲」として公開することだって可能です。それを販売や配信でもしてしまえば詐欺に近い行為になりますし、一度そういった作品が世に出てしまうと本当の未発表音源が発見されたときにも疑問の目を向けなければいけません。
とはいえ、それを恐れて生成AI自体を禁止してしまうと、技術の進歩も止まってしまいます。
YouTubeではこの対策として、AIで生成された動画はそれがわかるような注意書きを表示させることができるようになりました。
動画を投稿すると、詳細情報の入力画面に上のようなチェック項目が表示されます。
こちらをチェックすると、動画の概要欄に「改変または合成されたコンテンツ」と表示されます。QUEENの「おジャ魔女カーニバル!!」の動画にもしっかり表示されていました。
個人的には、今回紹介したような動画は節々から元の作品へのリスペクトも感じますし、悪用さえしなければ全然アリだと考えています。AIで作られた作品はちゃんとAIと明示し、騙されてしまう人が出ないような仕組みの中で、技術が進歩していくといいですね。
※記事内の見解はあくまでライター個人のものであり、媒体を代表するものではありません