はじめての1.5倍速体験

『映画を早送りで観る人たち(稲田豊史著/光文社新書)』という本を読みました。映画やドラマを早送りで見たり、10秒ずつ飛ばしながら見る人が増えていること、その社会的背景、時代背景、そういったものをざっくり理解することができました。
そこで、私は早送りで映画を見たことがないので、Netflixの1.5倍速で早送り視聴を体験してみました。

1.5倍速の『ボーン・スプレマシー』

私は作家主義で映画を捉えているので、どの作品を早送りの犠牲にするか悩みました。なぜなら作家(映画監督)が意図して作った時間を、勝手に短縮することは作家と作品に礼を失する行為だと思うからです。

Netflix任せで、一番に表示された『ボーン・スプレマシー』(2004年 ポール・グリーングラス監督)を見ることにしました。記憶喪失のジェイソン・ボーンが活躍するスパイ映画の二作目です。一作目も観ていません。
1.5倍速だから115分の映画を76分で見ることになります。早送り視聴派のいう「タイパ(タイム・パフォーマンス)がいい」という状態です。

ストーリーやカッコいいシーンは早送りでも把握はできるものだと分かりました。「ジェイソン・ボーンかっこええ!」とか「ラストシーンが良かった」とか感想を言うことができます。

早送り視聴中に通常再生に戻したくなったかというと、全くそんな気にはならず、むしろもっと早くしたくなりました。
「早いから通常に戻したくなる」のではなく「早いともっと早くしたくなる」。いち早くラストに至るために「余計なシーンは飛ばして見る」という、私にはサッパリ意味の分からなかった行為ですが、ストーリーの動かないカーチェイスのシーンなどは、画に動きがあっても状況は変わらないため、飛ばしても問題ないように感じました。

タイパ派の「パフォーマンス」

タイパ派が言う短時間で得られる「パフォーマンス」とは、プロットを把握できればSNS上などのコミュニティで人間関係が円滑になる、映画に詳しいという個性を持つことができる、趣味に合わないものを素早く判断し無駄な時間を節約できるなどにまとめられると思います。

私はプロットの他に、撮影、編集、音楽、演技、演出、画面構成から、作家の意図を汲み取り、作家と対話するように観る方法を好みます。
そういうのが好きなだけです。
そうやって得られる感動を知っているし、パフォーマンスも求めていないから楽しい。
プロットを追う以外の楽しみ方を自分で発見していくのが映画を観ていく醍醐味だと思っています。

プロット以外の情報を捨てている

そう考えると、今回の早送り視聴で39分短縮できた代わりに、プロット以外から感じられる作家の意図や雰囲気を感じる情報を全て捨てていたことになります。早送りしているのに「もっと早くしたくなる」「余計なシーンを飛ばしたくなる」というのは、プロット以外の情報を捨てているから起こる現象でしょう。

食材の栄養が摂取できれば、おいしい部分は捨てちゃってもいいや、みたいな。いやいやおいしい方がいいでしょう、と私は思います。

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