映画の「続編」いろいろ

映画「トップガン マーヴェリック」(ジョセフ・コシンスキー監督/2022年)を観てきました。1986年に制作された「トップガン」(トニー・スコット監督)から36年越しの続編です。
一言に「続編」といってもいろいろありますが、私は大きく3つに分類してみました。

 目次
  • A群:いわゆる続編
  • B群:複数でひとつ
  • C群:続編ではない続編
  • 「トップガン マーヴェリック」
  • プロデューサーという仕事
  • A群:いわゆる続編

    主だったA群を挙げると…

    『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ(ロバート・ゼメキス監督)
    『ターミネーター』シリーズ(ジェームズ・キャメロン監督他)
    『マトリックス』シリーズ(ウォシャウスキー兄弟監督他)
    『トランスフォーマー』シリーズ(マイケル・ベイ監督他)
    『トイ・ストーリー』シリーズ(ジョン・ラセター監督他)
    『インディ・ジョーンズ』シリーズ(スティーブン・スピルバーグ監督他)
    『スパイダーマン』シリーズ(サム・ライミ監督他)
    『ハリー・ポッター』シリーズ(クリス・コロンバス監督他)

    まだまだいっぱいありますね、この辺りでやめます。
    A群の「続編」は、物語の登場人物や設定がヴィークル、手段や容れ物として働きます。監督など作り手が違っても、演じる役者が変わっても、ヴィークルが同じだから続編です。
    ストーリーには当然連続性がありますが、その連続性は必ずしも重要な要素ではなく、知っていればより楽しめる、というものです。
    馴染みの設定、人気のキャラクターが出てくるので、商業的に失敗するリスクを低くすることができます。A群には当初想定した容れ物を大きく超えて新しい解釈を加えるものもあり、例えばバットマンのダークナイトトリロジー(クリストファー・ノーラン監督)はこの分類でいうとA’(エーダッシュ)です。

    B群:複数でひとつ

    B群は…

    『ゴッドファーザー』三部作(フランシス・フォード・コッポラ監督)
    『トリコロール』三部作(クシシュトフ・キェシロフスキ監督)
    『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(ピーター・ジャクソン監督)

    三部作ばかり挙げてしまいましたが、複数の作品で一つのテーマを描くような分類です。
    連続性はA群より重要で、しかしそれはストーリーや登場人物の連続性ではなく、テーマの連続性です。
    『ロード・オブ・ザ・リング』はB群に分類していますが、限りなくA群寄りです。あるテーマを描くのに複数の作品が本来的に必要とされるのがB群で、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作はテーマよりストーリーを語る尺のための連続性だと感じるからです。

    C群:続編ではない続編

    『バクマン』(大場つぐみ/小畑健)という、漫画作りをモチーフにした漫画があります。
    ストーリーのアイディアに行き詰まった主人公が、「続き物のエピソード」という予め意図された続編ではなく、自分が過去に書いた印象的なエピソードをきっかけに新しいストーリーを作るという、「続編ではない続編」作りに取り組む話がありました。
    それに当たるのがこのC群という分類です。

    C群は…

    『男と女』(1966)→『男と女 人生最良の日々』(2019)
    『ハスラー』(1961)→『ハスラー2』(1986)
    『トレインスポッティング』(1997)→『T2:トレインスポッティング』(2017)
    『ビフォア・サンライズ』(1995)→『ビフォア・サンセット』(2004)→『ビフォア・ミッドナイト』(2013)

    どれも作品と作品の間に大きな時間的間隔があります。当初続編の制作を想定していなかった作品が多いと思います。
    この作品群では、時間の隔たりを積極的に作品に取り入れ、作品間の時間的隔たりと現実の時間経過をリンクさせて描きます。だから演じる役者も作品と同じ時を過ごした同じ人でなくてはなりません。登場人物が物語中を過ごした時間、その間に経験したであろうライフステージ毎の様々な出来事と、僕らが過ごしてきた現実の時間とその間の出来事をリンクさせ、観る人各個人の思い出が物語を補強します。

    そういう思い出のバックアップを受けたC群の作品は、とても印象深いものになりそうですが、前作から53年後『男と女 人生最良の日々』のジャンとアンヌはピンと来ませんでした。
    前作の20年後を描いた『T2:トレインスポッティング』は、ダメな若者がそこそこダメな夢見がちな中年になっていて、僕は同窓会気分で盛り上がりましたが、それは相対的な同世代感があったからこそですかね。

    つまりC群の作品は時間経過による経験という強力なバックアップを得られますが、それは観る人の世代や作品を観るタイミングや状況によって変わるもので、普遍性の獲得が難しいともいえます。ライフステージによって観た印象が異なる、というのも悪くないですけど。

    「トップガン マーヴェリック」

    新作のトップガンは、分類上、前作から36年の時を隔てたC群の作品でありながら、時間の経過や観る人の経験に頼るところが全くありませんでした。
    センチメントに一切訴えず「前作を観て判る人だけ判ればいい」みたいな見せ方もなく、どこまでも純粋にエンタテイメント性を追求したマーヴェリックは、例えるなら澄み切った極上のスープみたいな映画です。
    雑味が一切ない。媚びが一切ないという純粋さ、その気持ちの良さ。人気の食材をこれでもかと載せて、見栄えがよくて誰もがおいしいと言うようなスープを作ろうとする姿勢が多い中、マーヴェリックが見せるエンタテイメントへの純粋な意志は、映画の根源的な喜びを思い出させ、その心意気に感動を覚えました。

    プロデューサーという仕事

    この純粋で澄み切った映画はジョセフ・コシンスキー監督のアイディアと企画に依るものですが、私はプロデューサーであるジェリー・ブラッカイマー氏の存在を強く感じました。

    ジェリー・ブラッカイマー氏はドン・シンプソン氏と組んで80年代から大ヒット映画を連発しているプロデューサーで、36年前のトップガンもジェリー・ブラッカイマー氏のプロデュースによるものです。
    ミュージックビデオ風のスタイリッシュな見せ方が特徴で、それは批判の的にもなってきましたが、とにかく一貫して作り続けている強さがあります。

    プロデューサーはクリエイター(映画監督など)より作品全体に関わるポジションで、資金集めから演出まで、全工程に関わり、責任を持ちます。

    特定の映画監督と組まず、貪欲におもしろいものを追求する姿、考え方のブレなさ。映画が最高のエンタテイメントだと確信し、そう公言する態度。

    規模は違えど、制作会社として見習いたい姿勢です。そういうスタイルのある制作会社を目指しています。

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