chatGPTが世間を賑わせていますが、先んじて画像自動生成AIも話題になりました。そんな中、「画像生成AIは絵コンテに使えるんじゃないのか」なんてちらほら聞かれます。
“絵コンテ講師”を名乗る僕としては、放ってはおけません。
調べてみました。
画像生成AIについて
文字で情報を記入すると、AIがそれに関する画像を自動的に生成する。
それが画像生成AIです。
ウェプレスの過去記事でも取り上げられています。
『AIの画像自動生成技術がすごいスピードで進化を遂げている』
https://wepress.web-magazine.jp/2022/09/12/20220912-2/
この技術を使えば、絵コンテや絵を描くのが苦手な人でも、絵コンテが描けて(作れて)しまうのではないか。
これを検証するのが本稿です。
いくつかある画像生成AIの中で、今回は無料で使える次のものを試してみました。
Stable Diffusion Demo
https://huggingface.co/spaces/stabilityai/stable-diffusion
使い方は簡単です。

①に希望する文字列を記入して、
②の「Generate image」をクリックするだけ。
AIが画像を生成して表示します。
試してみました
撮影で使いそうなお題をいくつか考えて生成してみました。
『喫茶店で向かい合って座る男女』
結果はこちら。

どうやら香港あたりと思われる雰囲気の建物の前で、男女がいました。
が、顔がドロドロに溶けていてホラーにしか思えず、自主的にぼかしを入れました。
日本語ではうまくいかない、という情報もあるので、英語に変えてみました。
『Man and woman sitting facing each other in a coffee shop』

英語にしたら多少まともになりました。
というより、登場人物がアジア系から欧米系になったようです。
ただ、これは絵コンテとは言えません。
そこで、入力文字列の最後に「イラスト」を加えてみます。
『喫茶店で向かい合って座る男女 イラスト』
『Man and woman sitting facing each other in a coffee shop illustration』

グッと良くなりました。
もう少し別のパターンも見てみたい。
今度は、最後に「漫画」をつけます。
『喫茶店で向かい合って座る男女 漫画』
『Man and woman sitting facing each other in a coffee shop Manga』

なるほど、こう来るか。
では、「絵コンテ」と入れてみよう。
『喫茶店で向かい合って座る男女 絵コンテ』
『Man and woman sitting facing each other in a coffee shop Storyboard』

漫画と近いけど、いい感じかもしれません。
もう少し試します。
「動画」を加えます。
『喫茶店で向かい合って座る男女 動画 絵コンテ』
『Man and woman sitting facing each other at a coffee shop Video storyboard』

これはダメだ。実写っぽくなった。
文字列の入力の順番も影響するかもしれない。
絵コンテを描きたいわけだから、「絵コンテ」というのは冒頭に入れた方がいいのかもしれない。
『絵コンテ 喫茶店で向かい合って座る男女』
『Storyboard Man and woman sitting facing each other in a coffee shop』

悪くなくなってきました。
絵コンテは一枚の絵で完結するわけではありません。
複数の絵のつながりが見たい。
最後に「一連の流れ」と付け加えてみました。
『絵コンテ 二人の男が素手で殴り合っている 一連の流れ』
『Storyboard Two men are punching each other with their bare hands The sequence of events』

ぐっと絵コンテっぽくなりました。
絵コンテとして使えるのか(私見)
どうやらそれっぽいものを生成できるようですが、現時点ではまだまだ実用的とは言えないと感じました。
僕は、絵コンテには大きく3つの役目があると考えており、それぞれAI向ではないと思うのです。
◎絵コンテの役目:その1
全体の流れを見て、各カットが適切かをチェックできる
一度ストーリー全体を絵コンテにしてみることで、「全体の中のそのシーン」「そのシーンの中のそのカット」といった見方ができるようになります。
そのためには、大量のカットを早く描けることが重要であり、AIに1枚1枚絵を生成させてる場合ではないと思います。
◎絵コンテの役目:その2
カットとカットのつながりをチェックできる
映像というのは、カット間のつながりこそが重要なポイント。
そのため、1枚1枚の絵コンテを独立して用意しても、いい・悪いの判断はできません。
◎絵コンテの役目:その3
実際に撮影できるのかどうかチェックできる(実写の場合)
当然のことながら、絵コンテに描かれた絵は、実際に撮影できることが求められます。
そのためのチェックや撮影方法の検討ができるのも絵コンテの意義。
AIで、ただ”美しい絵”を用意すればいいというものでもありません。
絵コンテは、
①あーでもないこーでもないと頭の中で考えを巡らせた上で、
②そのアイデアを絵で表現したもの
ここでの②は、いずれ何らかの形でAIが担当できることもあるかもしれません。
しかし、①は避けて通れない。
まとめ
今はまだ、フリー素材サイトや画像検索の方が、求めるものにアクセスしやすい気がします。
であれば逆に、フリー素材サイトで見つからない新しいアイデアが欲しいとき、はどうでしょうか。
『絵コンテ 劇的なサッカーのシュート』
『Storyboard dramatic soccer shoot』

こうやって、ヒントをもらうために画像を生成してみる、というのはアリかもしれません。
専門書にも、ヒントになりそうなことが書いてありました。
『先読み! IT×ビジネス講座 画像生成AI』
深津貴之・水野祐・酒井麻里子 著(2023年インプレス)
・理想通りの仕上がりにするには、根気よく細部を調整していく作業が必要
・AIがひどい画像を作るときは、たいていはAIのせいじゃなくて、画像を作る人がひどい命令をしたせい
・細部の不正確さが目立たないものは作りやすく、あとから画像編集ソフトでコラージュする方法がいい
・描き手がよく知らないことを描く場合にも役立つので、資料としても使いやすいのではないか
僕は国内外の絵コンテ集の収集家でもあります。

が、たくさん見れば見るほど、
「絵コンテには決まった答えなど無い」
ということがわかってきました。
上記の書籍にはこんな記述もあります。
・AIは学習した情報から推測できないものは生成できない
つまり、絵コンテという「答えがないもの」を、AIは描くことが難しいんじゃないか。
引き続き、期待感を持って見ていきたいと思います。