「この人に頼んだらこうなる」みたいなスタイルは価値があること

バズ・ラーマン監督の新作、エルヴィス・プレスリーの伝記映画『エルヴィス』を観ました。伝記といっても、そこには制作の意図や作家の意思が必ず反映されます。エルヴィスほど主人公をダシに監督が“我”を貫いている伝記は珍しいと思います。

我を出す映画監督はたくさんいます。スパイク・リー監督、クエンティン・タランティーノ監督、ギャスパー・ノエ監督、ウディ・アレン監督、みんな我が強く、また、我を出すのが仕事です。それが監督の作家性であり魅力です。

ところが伝記です。主人公はエルヴィス・プレスリー、それは鉄板、外せない要素ですが、史実よりも「こうあった方が美しい」というバズ・ラーマン監督の美意識が優先されているように見えるのが『エルヴィス』です。それが嫌らしくならないのは、バズ・ラーマン監督の黒人文化と音楽へのリスペクトが感じられるからでしょう。歌のシーンは例外なく、全て素晴らしい。高揚感が凄い。

バス・ラーマン監督のよく使う手法で、1秒に満たない早いカット回しや、ポップスとクラシックが自在に混ざり合って場面を彩るBGMなどが、シーンにマッチしてとても効いていました。

ここまで「バズ・ラーマン監督的手法」とシーンに「効く手法」が合致した作品はなかったのではないかと思います。テーマと監督、エルヴィス・プレスリーとバズ・ラーマン監督の相性の良さを感じました。

映画、映像の持つ力

エルヴィスの集大成となったインターナショナルホテルでのライブの模様。晩年、薬物で体力が衰え、太った体で歌い上げる“Unchained Melody”。それらはフィクションであると判っていながら、実際の記録映像より力強く、美しいフィクションだったと思います。だからエルヴィスの伝記映画だし、同時にバズ・ラーマン監督の手法とテーマがそれぞれを高め合った、バズ・ラーマン監督の映画だということもできると思います。その場にいるのと同じ感動だとは言いませんが、近い感情が湧き起こるんじゃないかと思います。

『トップガン・マーヴェリック』もIMAXで観た方がいいと思いましたが、『エルヴィス』こそIMAXシアターで観るのをおすすめします。

バズ・ラーマン監督

ところで、私はバズ・ラーマン監督が大好きです。私が映画館で観た回数の一番多い映画は『ムーラン・ルージュ』(2001)で、50回以上映画館で観たと言うと嘘だ!と返されますが、本当です、本当に観ました。

バズ・ラーマン監督のフィルモグラフィーは次の通り。

1.ダンシング・ヒーロー(1992)
2.ロミオ+ジュリエット(1996)
3.ムーラン・ルージュ(2001)
4.オーストラリア(2008)
5.華麗なるギャツビー(2013)
6.エルヴィス(2022)

バズ・ラーマン監督のスタイルは最初の三作品を制作する中で形成されていったものだと思います。そのスタイルをまとめると…

・豪華でグラマラス、仰々しい、ギラギラ、くどい
・破滅に向かう
・登場人物並みに存在感がある音楽
・ストーリー < 見せたい画(やたら早いカット、ふざけた画)

このスタイルは批判の的にもなりますが、「この人に頼んだらこうなる」みたいなスタイルは価値があることです。
制作会社として、そういうスタイルを作っていきたいですね。

【PR】


さいたまのホームページ制作運用定額プラン2x2(ツーバイツー)のご案内


長尺動画制作パッケージのご案内│新浦和映像