『映画を早送りで観る人たち』を読んで、今後の動画制作について考えた

(この記事は約5分で読めます)

本屋をぶらついてて、タイトルを見てすぐレジに持っていきました。

『映画を早送りで観る人たち』
(稲田 豊史 著・2022年光文社)
https://www.amazon.co.jp/dp/B09X5HMG41/

「ファスト映画を流して、著作権違反で逮捕」というニュースに触れ、
「ファスト映画=映画のダイジェスト版が人気なのか」と衝撃を受けたばかり。

でも、妙に納得する気持ちもあったのです。

人は動画を見る前に、<内容と長さ>を天秤にかけている、と感じています。
しばらく話題をさらっていた映画『ドライブ・マイ・カー』も、知り合いの映画好きの中に「3時間は長いから」という理由で観に行かなかった人が少なからずいたのです。

映像と長さ。

この本を読んで、いろいろと感じたことをまとめてみたいと思います。

※結論だけ知りたい方は、最後の「まとめ:これから、動画をどう作ればいいのだろうか」にお進みください。

再生ボタンの横には速度調整ボタンが付いている

YouTubeには速度調整ボタンが付いています。

オンライン講座サービスudemyにも、速度調整ボタンが付いています。

これらは、情報を手っ取り早く視聴するのに便利ですね。
でも、ネットフリックスに加入したとき、速度ボタンがついていて驚きました。

情報は短い方がいい。でも物語はどうなのか。

書評に共通していること

この本の書評もいくつか見かけました。

どれも、
・若者には余裕がない
・心の自由を奪われている
といった論調ばかりでした。

これ、本当に若者だけの特徴なのか。
現代人みんなに同じことが言えるんじゃないか。

自分が作った動画、教材は、ちゃんと見てほしい。
でも自分自身、ひとさまの動画は早送りで見ちゃう。

結婚式のスピーチや校長先生の話など、みんな短いものを期待してるのに、しゃべる方は長かったりする。

発信する側と受け手の行き違いは常に発生する。
その行き違いを緩和するのが、「早送り」なのではないか。

結局、自分も時間がない

「映画を早送りで鑑賞する」
これには、映像に関わる人間としてだいぶ抵抗があります。

ただ、現実問題として、僕も映画を観る時間は限られています。
映画館に行くかどうかは、かなり吟味が入る。

『ロッキーシリーズ』とか『ランボーシリーズ』の新しいのが出たとなると、これは親戚の冠婚葬祭みたいなものなので行かなきゃいけない。
それ以外は、「いつかオンラインで観ればいいか・・」となることも少なくない。

で、オンラインなら観るかというと、これまた2回、3回に分けてちょっとずつ観たりする。
これじゃあ、連続ドラマと変わらない。

みんな、短いことを求めてる

udemyで僕が公開した最初の一本は、15年前に収録した自分のセミナー動画でした。
当時、すごく反応がよかったはずなのに、udemyではクレームがひどくて驚きました。

この差は<テンポ>である、と分析しました。

実際、今の僕が昔の僕の講座を見ると、確かにかったるい。
間を取りすぎてるし、冗長に感じる。

この本の中にも、タイパ(タイム・パフォーマンス)という言葉が頻繁に登場します。
動画を見るのに、情報を得るのに、時間を気にする。

タイパのいいものが喜ばれる

「名作文学が10分で読める」みたいな本も以前から人気ですね。
「漫画でわかる」も同じ根っこにある。

つまり、大人も欲している。

この現象には、情報が多すぎて処理しきれなくなってる背景がある、と著者は指摘しています。
本の中のインタビューコメントにもこんなのがありました。
「めっちゃ足りないです、時間が」

「若い層=早送りする」と見られがちですが、今後、どの層にも当てはまるようになるのではないかと思うんです。
「早送り」は単に、「早送りできる環境が増えたから」じゃないか。

ネットフリックスに早送りボタンがついているから利用する。
エレベーターの「早く閉まる」ボタンがついたから、押す人は増える。

まとめ:これから、動画をどう作ればいいのだろうか

これからの作り手はそもそも、自分の作るものが「早送りされる」という視点を持たなきゃいけないなと思いました。
そのための対策、施策を練っておく。

書籍の中に、「快適さが終始途切れない作品が評価される」という記述がありました。
長い作品を観てもらうためには、ちゃんと観たくなるフックを用意する。

noteやブログでも、冒頭に「この記事は2分で読めます」と書いてあったり「目次」があるものが増えました。

美しく撮る技術も大事だし、かっこよく編集するテクニックも大事。
でも、なにより重要なのは、負担をかけずに見せる構成力かもしれない。

作り手は、”届け方”についても頭を使わなきゃいけない状況にいるようです。

※お気づきかと思いますが、本稿もいくつか、早く読みたい人向けの工夫を施しています。

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