ネットでニュースを眺めていると、『パルプ・フィクション』という言葉が目に飛び込んできました。
1994年の映画が今更なんのニュースになってるんだ?
記事では「クエンティン・タランティーノ監督が『パルプ・フィクション』のオリジナルシーンをNFTで販売する」とのこと。
NFTって何だ?と検索すると、「非代替性トークン」と出ている。
ああなるほど、そういうことね。
・・・とは、ならない!
僕の浅ーい知識では、「非代替性トークン」ってのは確か暗号資産関係で見かけた単語。
正直あまり関心もない。
ところが他にも、「ジェームズ・ボンドのNFTを発売・・」「NFTでアートを・・」なんて記事が目に入ったりして、頭から追いやることができません。
仕方ない。
調べてみました。
[ご注意]
僕はこっち方面の専門家ではありません。
今回の記事は、あまり興味がない人向けに、軽〜く、なんとな〜く「こんなものかな」と薄ぼんやりとイメージできるようになり、ニュースを見ても軽く受け流せるようになることだけを目的にしたものです。
- 目次
- 理解するために、まず背景を探る
- 著作権(所有者)の主張は難しい
- 著作権(所有者)のチェックには手間がかかる
- デジタル化は、著作権の問題を浮き彫りにした
- デジタル情報も、オリジナルでオンリーワンであることが証明されるようになった
- 話はようやく繋がった
理解するために、まず背景を探る
僕の経験上、こういったことを調べる時、言葉の意味を調べてもだいたいろくなことがありません。言葉の説明がまた別の分からない言葉で構成されてて、余計混乱してしまうだけ。
<ひどい例>
Aの言葉の意味を調べると、「Bのこと」と書いてある。
Bの言葉の意味を調べると、「Cのこと」と書いてある。
Cの意味を調べると、「Aとも呼ばれる」と書いてある。
実際、「NFTとは」で検索していくつかの記事をざっと読んでみましたが、どれもピンとこない。
判で押したように<語句や仕組みの説明>で埋められている。
で、それらがいまいちタランティーノとつながらない。
僕はセミナー講師歴も長いのですが、自分の仕事は「相手の”分からない隙間”を丁寧にパテで埋めていくような作業」だと考えています。
そこで、言葉の定義云々は一旦忘れ、なぜそのような技術が生まれてきたのかという背景から考えてみることにします。
著作権(所有者)の主張は難しい
かなり前のことですが、「一緒に映画学校のビジネスやらないか」と誘われて、とある打ち合わせに参加した時のこと。
そこで一番年嵩っぽい方が、「うちはこれまでこれだけのことをやってきた」とホームページを見せてくれました。
その瞬間、思わず「あ」と言葉が漏れました。
僕がやっている映画制作ワークショップの写真がそこに掲載されていたからです。
その写真はまさに僕が撮ったものでした。
打ち合わせは、そこで終了。
先方は平謝りで、「ホームページを作る時に、勝手に持ってきて使ってしまった」とのことでした。
話はこれで終わりましたが、その時にぼんやりと感じたことがあります。
「それが僕が撮った写真だということを相手が疑ってきたら、どうやって証明したらいいんだろう・・」と。
著作権(所有者)のチェックには手間がかかる
昔の勤め先では、僕が作ったパワーポイント資料をみんなが使いまわしていました。
各営業マンが、表紙に「○○様へのご提案」などと記入して、「俺が作った資料なんだけど・・」と口にするのを聞く度に、作ったのはお前じゃない、と心の中で突っ込んでました(笑)。
パワーポイントなどのデータに「作成者:○○」という記録が残せるのは、最初に作ったのが誰なのかが分かるようにするためなんだろうな、と思ったこともあります。
突然ですが、こちらの写真をご覧ください。
シルベスター・スタローンのサインです。
・・・嘘です。
彼のサインを真似して僕が書いたものです。
自分で飾るために20歳の頃に書いたんですが、後年、親族が間違って<お宝鑑定団>的な番組に出品して恥をかいたらどうしよう・・などと夢想したりもします。
もちろん、本物のサインには証明書がつきもの。
しかし、偽造ができないとは言い切れません。少なくとも、世の人は疑います。
パワーポイントの「作成者:○○」も、書き換えが可能です。
いずれにしても、「所有権を主張するだけ」では厳しい話だな、と思います。
デジタル化は、著作権の問題を浮き彫りにした
世の中はここ2、30年でみるみるうちにデジタル化しました。
スマホで好きな映画がいつでも見れちゃうなど、情報のデジタル化は、様々な恩恵を僕たちに与えてくれました。
一方で、所有権や著作権の問題も浮き彫りになりました。
デジタルは複製が簡単だからです。
オリジナルもコピーも無い。
また、簡単に変更も可能です。
「一番最初は誰が作ったのか」「元々はどんなデータだったのか」
これはもう、確認しようがないのでしょうか。
・・・実は、その問題を解決する技術が生まれたのです。
ようやく、今回の本題につながります。
デジタル情報も、オリジナルでオンリーワンであることが証明されるようになった
NFTという言葉を調べると、「トークン」だの「ブロックチェーン」だのといった言葉にぶつかります。
詳しく知りたい方は調べてみてください。
【なにやら、便利な技術が生まれた】以上!
・・ということで先に進めます。
僕なりに技術をとことん分かりやすく解説してみようと試みたのですが、ギブアップしました。
本稿の目的は言葉の定義をまとめることではなく、「NFTとやらが一体どう映画と関係しているのか」を解き明かすことにある、と言い訳させてください。
僕のぼんやりとした理解をまとめると次のようになります。
・デジタルデータにも鑑定書や所有証明書が記録できるようになった
・デジタルデータが改善されても、その履歴が全世界で共有されるため、オリジナリティーや所有者が明確になった
・オリジナリティーや所有者が明確なため、デジタルデータにも資産としての価値が生まれた
・デジタルデータに資産価値が生まれたため、それが流通に乗るようになった
・著作者と所有者(購入者)が明確になり、著作権者も金額面で恩恵を受けられるようになった
話はようやく繋がった
「デジタルデータが流通に乗るようになり、収益化が見込めるようになった」というのが、シンプルな表現でしょうか。
冒頭の『パルプ・フィクション』のニュースは、クエンティン・タランティーノ監督が映画の未編集シーンをいくつか(NFTで)販売する、という内容でした。
改めて見ると、確かにこれは興奮するニュースですね。
例えば僕が購入したなら、世界中で僕だけが未編集シーンを持っている。
一人でこっそり見てムフフとほくそ笑んでもいいし、「僕らだけで未編集シーンを見ないかい?」と女性を口説いてもいいし、「うちのサイトで公開します」とアクセス数を集めてもいい。
そしてこの流れは、映画だけでなく、音楽やアートなど様々なジャンルにも広がっているらしいのです。
好きな映画の一部を所有する。
僕ら映画ファンは、これまで考えたこともなかった時代にいるようです。