1月というのは、今年一年の展望に思いを馳せるタイミングではないでしょうか。
ただ、「一年間」という単位は、何かを成し遂げるには短すぎます。
もう少し長いスパンで物事を考えた方がいいのではないか。
以前、映画のシナリオを書いてた頃、自分の作品の主人公たちの”半生”を俯瞰して考えていました。
で、ふと思ったのです。
シナリオ的に考えると、自分の”半生”はどうなのか。
自分の来し方や今後を考えるにあたって、シナリオの技術を参考にしてみたのです。
面白い映画シナリオを書くための構造
映画のシナリオを学ぼうとすると、<起承転結><三幕構成>といった書き方に触れます。
これらについて詳しくない人が大半だと思うので、まずは簡易的に解説します。
[注意]僕の理解の範疇で書いています。
正確に解説することは本稿の目的ではありません。
<起承転結>
日本式のシナリオ構成と言えるでしょうか。
シナリオを4つの箱に分類し、構成します。
「シナリオには起承転結がある。起は始まり、承は展開、転は最高潮、結は終わり。
しかし私たちは、スタート、展開、クライマックス、ラストと呼んだ。」
(『複眼の映像』橋本忍 著より)
<三幕構成>
一方こちらはハリウッド式と言えるでしょう。
シナリオ全体を3つの幕(Act)に分類するやり方。
![](https://wepress.web-magazine.jp/wp-content/uploads/2023/01/86_1.jpg)
この図は、『ハリウッドストーリーテリング』(田中靖彦 著)から。
シド・フィールドというシナリオ界のレジェンド講師の内容を、シンプルに解説した書籍です。
大きなできごと(プロットポイント)があり、幕が切り替わっていく。
ものがたりのど真ん中で、主人公は最低・最悪の状況になる。
今回、自分の半生を当てはめるにあたっては、<三幕構成>の方を参照することにしました。
起承転結は、次々展開していく考え方であり、エンディングまで見越して考えます。
一方、三幕構成は、真ん中のターニングポイントを境にして前半と後半を比べる、という見方ができる。
今の僕(47歳)に当てはめやすいと考えました。
三幕構成に自分の半生を当てはめるステップ
ここからは僕個人の考え方になります。
次のようなステップで、これまでのできごとを書き込んでいきました。
(1)これまでで最悪のことは?を考える
今のところ、という条件付きですが、33歳の時。
当時の職場で干され、作っていた映画が暗礁に乗り上げ、脳梗塞を発症し、妻も入院しました。
これをAct2の「ミッドポイント」としました。
(2)最初に行動した大きな出来事は?を考える
最初の大きな決断として、大学を休学して海外に行ったことを選びました。
21歳でした。
これを「プロットポイント1」に。
(3)「Act2」の前後を比べてみる
Act2は「葛藤」期。ミッドポイントを境にして、前後がついになっている部分。
ここの前半、つまり21歳から33歳までは、社会人になってからの時期。
自分なりに努力してたつもりでしたが、何一つこれといった結果につながりませんでした。
しかし、33歳を超えてから、明らかに潮目が変わります。
例えば、妻の入院中に病院の廊下でまとめた新規事業計画が、当時勤めていた会社の稼ぎ頭になっていきます。
(4)年齢を当てはめて全体を俯瞰してみる
ここまでを記入するとこうなります。
![](https://wepress.web-magazine.jp/wp-content/uploads/2023/01/86_2.jpg)
単純計算で、「プロットポイント2」は45歳とはじき出されます。
その年齢を見て、僕は少し震えました。
この年、新型コロナウィルスにより、僕はそれまでの仕事をほぼ全て失います。
まさに、「さあ、どうする?」と大きな決断を迫られるポイントとなっていたのです。
三幕構成に半生を当てはめてみて感じたこと
意味のないただのお遊びのつもりでしたが、なんだかワクワクしてきました。
僕は今、Act3(第三幕)が始まったところ。
これまでを踏まえて、「どうストーリーを完結させるか」を考えるステージということです。
さてこれから何をしてやろうか。
一方で、この考え方には大きな欠点もあります。
この計算でいくと、僕の”終わりの年齢”が・・・まだちょっと早くないか??
あくまで、今どうするかの確認をしただけで、あまり先のことは一旦忘れます。
まとめ
「今年の目標」みたいなお題を考えると、つい近視眼的な項目が並んでしまいます。
かといって、人生を俯瞰するなんて漠然としすぎてピンとこない。
そんな時、ハリウッドの三幕構成に当てはめてみると、何か気づきが得られるかもしれません。
なにより、「状況設定」→「葛藤」→「解決」という表現が、とっても(前向きな)人生っぽくていいなと感じています。
ただ・・・今回の僕の分析は正直、都合いいエピソードだけピックアップした感は否めません。
あと途中、実はちょっと”話を盛って”ます。
「妻の入院中に、病院の廊下で書いた新規事業計画が・・・」のくだり。
これ実際は、手術中に手持ち無沙汰で、仕方なく近くのドトールで溜まってた仕事をしただけ。
新規事業も、同僚や上司の協力あってのことですからね。
ものがたり(人生)は、数珠つなぎ。
何事も、捉え方次第なのかもしれません。