ハッシュとシャープ

「#01」は「ナンバーワン」

連続するWebコンテンツ、動画やドラマ、音声コンテンツなど、シリーズ化を前提とする連載もののタイトルなどで、数字の前に#が置かれているのをよく目にします。
「料理教室#01 はじめてのたまご料理」とか「スペイン語講座#01 スペイン語で挨拶しよう!」みたいなやつです。

この表記はよく目にしますが、ではこの記号はなんと読むのが正しいか、気にされている方はあまり多くない印象があります。
打ち合わせの際などに聞いていると、「シャープ」と読む方が多いようです。
「シャープゼロイチ」と。
下着の「パンツ」ではなく、ズボンを指す「パンツ」みたいなアクセントで、「シャープ」と尻上がりの調子で。

正しい読みは「ナンバー」です。
「#01」は「ナンバーワン」でよいわけです。
ナンバーワン、ナンバーツー、ほら言いやすい。
急に身近になった感覚さえあります。
この場合の「#」は、役割としては「No.」と同じです。
なぜ#が大勢を占めるようになったのか予想すると、文字数が省略できて書くのも楽だからでしょうね。

義務教育の下地+誤った電話の音声案内

では「シャープ」という読みはどこから来たか。
義務教育の下地+誤った電話の音声案内からです。
小学校の音楽の授業で、楽譜にある♯(シャープ)は半音上げる、♭(フラット)は半音下げる記号であることを誰もが必ず習っています。
その後、たいてい電話の音声案内に触れる機会があります。
「案内の後に『シャープ』を・・・」とか「メッセージを確認するには『シャープ』を・・・」みたいなやつです。電話機の文字盤にシャープ記号はないのに、僕らはシャープを押せと促され、薄れかけた義務教育の記憶を頼りに、形が似ているだけの#を押すよう強要され、#=♯と刷り込まれてきたわけです。

もともと#は「ハッシュ」という記号で、ハッシュに続く数字が電話番号や号数など意味のある数字の羅列であることを示す記号です。
それが文字に転用され、SNS文化として定着したのが「ハッシュタグ」です。

SNS文化として定着したのが「ハッシュタグ」

SNS文化の隆盛、フィジカルな文字盤のないスマートフォンのUI。
文化もデバイスも変化を続けています。
いつまで音声案内はハッシュをシャープと言い続けるのか?
それは変化に対応できるか、自己変革は可能か、デファクトスタンダードは誤りを正せるのか、というような類いの問いで、意外と示唆に富んでいるような気がします。

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