6月登録義務化&12月免許制度スタート。
ドローンビジネスの現在地と将来《後編》

ドローンビジネスの現在と未来について、「サイニチドローンスクール」(さいたま市)の担当者から話を伺う本特集。前編ではドローンの現在の活用事例や課題とともに、今年6月に施行される各種法整備について紹介した。

後編では、実際にドローンの飛行許可を得る際に重要となるスクール選びのポイントや、ドローン業界の未来予想図について掘り下げていく。

そもそもスクール通いは必須?
「ドローン飛行」に求められるもの

ドローンスクールの体験会風景

最安の機体なら1〜2万円程度で入手でき、活用シーンも増え続けているというドローン。前編までをお読みいただき、実際にドローンの操縦に興味が湧いたという人も多いのでは。

しかしこの先、機体の登録制度や免許制度が整っていくことを考えると、ドローンを飛ばすためにはドローンスクールに通うことが必須となってくるのだろうか。

大宮けんぽグラウンドでの測量レッスン風景

実は、現在だけでなく法整備後も、独学または免許未取得でドローンを飛ばすことは可能ではある。ただし、何の知識やスキルもない状態で飛行できる空域には限りがあり、「空港等の上空」「人口密集エリア」「高さ150m以上」などの飛行にはあらかじめ国土交通省への飛行許可申請が必要だ。

飛行許可申請をするには一定の手間がかかり、特にゼロから自力で手続きする場合は飛行実績や技術などを客観的に証明しなければならず、これはなかなか難易度が高い。そこで大きな味方となるのがドローンスクールなのだと、サイニチドローンスクール教官の麦倉氏は言う。

「一定のカリキュラムを修了することで、飛行許可申請手続きの一部省略が可能です。さらに12月施行予定の免許制度においても、ドローンスクールで民間資格を取得した者に対しては各種試験の一部免除等も検討されています。免許導入前からスクールに通っても無駄にならないといえるでしょう」

全国に1,200校以上あるとされるドローンスクール
自分に合ったスクールを選ぶポイントは?

ドローンスクール選びのポイントを語る麦倉氏

現在国内で運営されるドローンスクールは1,200校以上あるともいわれ、受講後に取得できる民間資格の種類も数多く存在しているのが現実だ。

その中から自分にあったスクールを選ぶ際のポイントについて麦倉氏に伺ってみたところ、民間資格はいずれも国交省の要件を満たしているはずであり、基本的に団体ごとの大きな優劣はないそうだ。しかしその一方で、スクールの施設やカリキュラムについてはさまざまだという。

そこでスクール選びにおける大きなポイントは3つある。

1つ目は「どれだけ実際の操縦経験を積めるか」。

「飛行許可申請には10時間の操縦経験が必要となりますが、スクールによって“10時間フライト”の解釈が大きく異なります。サイニチドローンスクールでは、インストラクター1人に対して1~2人の受講生がドローン実機を手に10時間のフライトを目指しますが、シミュレーター込みでフライト時間をカウントしているスクールもあると聞いたことがあります。またこちらも聞いた話ですが、実機を用いた操縦練習でも、受講人数が多いときに発生する操作待ちの時間も含めて10時間フライトとカウントしているスクールもあるそうです」(麦倉氏)

ポイントの2つ目は「レッスンコースや講師陣が目的とマッチしているか」だ。

「スクール選択を誤ると、基本操作方法は身についても、ニーズに見合った情報やスキルが校内になく、現場でドローンを活かせない状況にもなりかねません。例えば、当校の『測量コース』は一般社団法人ドローン測量教育研究機構(DSERO)の認定を受けた内容です。国の基準に沿ったマニュアルを踏まえたカリキュラムを用意し、実際の大手測量現場にも関わる講師がレッスンしています。ところが、スクールによっては“ドローンは飛ばせても実務経験や現場知識は皆無”という講師が少なくないのが現実です」(麦倉氏)

コース名だけで安易に判断するのではなく、一歩深掘りして「どんな経歴の講師陣か」「卒業後に生かせるリアルな技術や情報があるか」という視点で慎重に検討することが重要になりそうだ。

大宮けんぽグラウンドでの測量レッスン風景

そして3つ目のポイントは、「施設が充実しているか」という点。

サイニチドローンスクールでは埼玉県の施設を活用することで、練習場としては日本屈指の広さを誇る大型体育館や大宮けんぽグラウンドでトレーニングを積むことができるが、天井高があまり高くない部屋を屋内練習場としているスクールも珍しくないという。

ドローンは本来広い空中で自由度高く飛行させるもの。スクール卒業後に狭い部屋でドローンを練習することはあっても、活用することはないだろう。スクールでどのくらい飛行経験を積めるか、コース内容が目的に合っているかも大切だが、実際に使う場面に近い環境でどれだけ練習ができるかは想像以上に大切とのことだ。

陸海空を飛び越えて、人も運べるようになる!?
ドローンビジネスの青写真

最後に、近い将来ドローンはどのような発展を遂げていくのかを尋ねてみた。

「人が急行しにくい過疎地や、山岳地帯における救急車やバス・タクシーとしての活用、中州に取り残された人の救助なども視野に入れて発展を目指しています。報道によると、すでに中国の広州を拠点とするEHang(イーハン)では2人乗りの空飛ぶタクシーとしてデモ飛行をおこなっており、新たな交通として採用も発表されているようです。赤外線カメラの機能と組み合わせることで『雪山での遭難者をドローンで捜索し、発見したらその機体で救助する』ということまでできるようになるかもしれませんね」(麦倉氏)

話を聞くだけで思わずワクワクさせられるドローンの未来予想図。産業に限らず、より生活に密着した場面で、私たちがリアルな恩恵を受ける「ドローンとの日常」がすぐそこまで来ているようだ。

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◇取材・文/ライター 矢島
埼玉在住、2人の姉妹の育児中。さいたま市内のニュースや人を中心に取材・執筆してい
ます。

日本は諸外国と比べると実証実験や法整備等はまだまだ遅れを取っているそうだが、技術力と他国での前例を活用していくことで、ドローンによって救われる「人・モノ・命」がこれから増えていくに違いない。

そして、今から“ドローンパイロット”として知識や技術を身に着けておくことは、これからを生きる私たちにとって大きな強みとなると言えるだろう。

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