今、音声メディアが面白い! ポッドキャスター2名が予想する音声メディアのこれから《後編》

話題を席巻した音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」に続くように、Twitterが音声チャット機能「スペース」をリリース。
今、音声メディアが注目を集めているなか、Podcastで音声コンテンツ発信歴10年近くの中山陽平氏とオリカワシュウイチ氏。二人の話の後編。
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一度嫌われたら二度と聞かれない……音声コンテンツを作る上で気をつけるべきこと

− これから音声コンテンツを作ろうと考え始めた方に向けて、お二人が音声コンテンツを作るうえで気をつけていることや、アドバイスがあれば教えてください。

オリカワ: 今は機材がどんどん進化していて、何も考えずにiPhoneを操作するだけですごい映像が撮れる時代になりました。でもAppleでさえ解決できていない機能がひとつだけあるんですね。それが録音なんです。もちろん最低限は録音できるけど、納品できるクオリティにはならない。なぜ音の問題が解決できないかというと、録音は機材と環境としゃべる人、そのすべてが一体となってはじめていい録音ができるからなんです。

となると、いい音声を届けるためには練習というか、自分のことを知ることが必要になります。例えば録音した音声を確認してみるとしゃべり始める前に舌打ちが入っていたり、鼻で息を吸い込む音が入っていたり、いろいろなクセに気づくんですよ。こういう音って聞いている人にとっては本当に不愉快。

− なるほど、音しかないコンテンツだからこそ余計に気になってしまう。

中山: 口癖とかも出ますよね。意識すればするほど増えちゃう(笑)。最初は「スーッ」という無声音がたくさん入っていたり、「えー……」とか「なんか」とかいう口癖がいっぱい録音されていて、絶望するんです。

 

オリカワ: あと録音環境については、まず部屋の中で何もせずにマイクをオンにして聞いてみてください。きっと騒音しか聞こえてこないと思います。でもこれはある程度受け入れないと厳しい。なので、どんなふうに聞こえるのかを確認するところが第一歩。そして騒音の元を確かめて、ひとつずつ削っていく。

僕は収録するときには服にも気をつけています。汗をかくとフローリングで足がペタペタする音が入ってしまうので靴下は必ず履く。どんなに寒くてもすれる音が入るのでダウンジャケットは着ない。だけどもちろんエアコンも切る。自分自身のしゃべり方を知り、収録しようとしている環境のことを知り、改善することがなにより大事なんです。「マイクは何がいいんですか?」とよく聞かれますが、マイクのウエイトなんて全体の2割程度。それくらいしゃべる人本人と録音環境が重要なんです。

中山: そういう気遣いのできる人が音声メディアに向いている人っていうことなんでしょうね。録音したものをそのまま公開するのは簡単ですが、最低限他人にどう聞こえるのか自分で聞いて確認するべき。ある程度これでOKというところまで持っていかないと、すごくセンシティブなメディアなので、それだけで内容以前に嫌いになっちゃう。そこは本当に取り返しがつかないので。

オリカワ: 嫌いになって聞くのを辞めたポッドキャストは、もう二度と聞くことはないですよね。

中山: ブラックリスト状態になっちゃいますね。ファーストインプレッションが相当大事ですよ。

冒頭のクオリティとエンタメ的要素。聞かれるコンテンツ作りのテクニック

オリカワ: そう考えると、中山さんのポッドキャストは最初女性の声で始まるじゃないですか。このやり方はアリですよね。これだけで冒頭の声を聞いて「なんか嫌いだな」とふるいにかけられるところをすり抜けられる。

中山: あれは企業っぽさを出すテクニックで、話者が二人以上いたほうが企業っぽさを出せるんですよ。でも、うちは相手をしてくれる人がいないので(笑)、話をするのは僕しかいない。ならば最初と最後は別の人にしゃべってもらおうと思って外注に出しました。声優さんの卵とかのプロダクションがあって、かなり安くやってくれるんですよ。

− YouTubeでもオープニングがあるだけでちゃんとした動画感が出ますしね。

オリカワ: 文章小説は書き出しの一行が大事っていいますが、それに近いんじゃないですかね。僕も冒頭の「こんにちは」の一言は何度も発声の練習をしましたから。

 

中山: あとはやっぱり軸がブレないということが重要ですね。自分の言っていることに一貫性が保てていて、過去に作ったコンテンツと矛盾しない。もし矛盾が生じてしまうと「一貫性がないじゃないか!」と信頼を失ってしまいます。なので、きちんと自分の中に軸があって頭の中が整理されている人は、音声メディアをスムーズに続けていけると思います。

逆に、毎回その場でなんとなくしゃべっている人は難しい。文字コンテンツだと過去に自分が発信した内容を検索して探せるから一貫性を保てますが、音声はさすがに毎回聞き直せない。

オリカワ: あと、ある程度エンタメのニオイがするものじゃないと誰にも見向きされなくなる気もします。僕自身、勉強しようと思って英会話のポッドキャストを聞いてみたりしたことがあるんですが、どうも途中で嫌になってしまう。

中山: 音声って文字と違って一部分から全体像をつかみにくいんですね。なので、学習系はずっと集中して聞いていないといけない。でも今は音声コンテンツってほとんど“ながら聞き”で消費されているんです。本気で勉強したいという人は使うんでしょうけど、なんとなく勉強してみるかな程度で聞くとつらいので、あまりウケないわけですね。

もちろん集中して聞かないとわからないコンテンツを発信するのもいいんですが、パイは相当小さくなります。うちはそれでいいと思ってやっているんですが、幅広い人に聞いてもらって、そこからビジネスを知ってもらったり、露出したりすることを考えるなら、やっぱりエンタメ的要素を入れていかないときついかもしれません。

ClubhouseにTwitterの「スペース」。音声メディアの未来はどうなる?


− Clubhouseの話題は先ほど出ましたが、Twitterも後を追うように音声チャット機能の「スペース」をリリースするなど、音声メディアブームが来始めているように感じます。今後の音声メディアはどのようになっていくと予想されますか?

中山: インターネット回線がどんどん速くなっているので外でも気軽にダウンロードできますし、テレワークが相当増えているのも追い風になると思いますし、需要は間違いなく上がるでしょうね。でもメインストリームに乗ることはないと思います。マーケティングの視点で見れば音声コンテンツはバックエンドのコンテンツ。濃いお客さんに対しての最後のひと押しとして、ファンになってもらうためのコンテンツとしてこれからも生き残っていくんじゃないかと思います。

活用する側としてはその位置づけを意識することが重要で、個人で使う場合も浅いファンを作るというより、濃いファンを作るためにやるということを押さえて使ってもらえたらいいと思います。ただし、活用する側の人は軸がしっかりしていないと持たないですから、そういう意味ではハードルが高いメディアにはなるでしょうね。

オリカワ: どんなメディアも流行り廃りの波がありますし、見ている層や聞いている層が違うもの。現状音声メディアはまだやっている人が少ないので、今から始めることでこれまで取りこぼししている層にアプローチできるというメリットが大きいのではないでしょうか。

中山: あとClubhouseが爆発的に話題になったおかげで、音声メディアがあるんだと認識された感じがありますね。それで「ネットラジオ」とかで検索してポッドキャストの存在を知り、アプリで聞けるんだとか、そんな気付きはあったんじゃないかな。

例えば以前ですが、iOSのアップデートによってiTunesからPodcastが別アプリとして切り離されたときに再生数が伸びたことがあったんですよね。あれは切り離されてはじめてPodcastの存在を知った人が多かったんだと思うんですね。

− Clubhouseのヒットで音声メディアが認識されたことで、Podcastが別アプリとして独立したときと同様に“広がった感”があったんですね。

中山: なので今後もプラットフォームは何であれ、何らかの音声コンテンツを“ながら聞き”しながら吸収していくという文化はどんどん広がっていくんじゃないかと思います。

オリカワ: そこにアプローチするために、早いうちから音声コンテンツ制作の練習をしておくのはいいんじゃないかな。


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参加者プロフィール


中山陽平
株式会社ラウンドナップ代表取締役/Webコンサルタント
https://www.roundup-consulting.jp/

Webコンサルタント中山陽平の「中小企業を強くする」実践ウェブ戦略Podcast

オリカワシュウイチ

「映画工房カルフのように」主宰/映画制作体験プロデューサー/絵コンテコーチ
https://karufu.net/

映画が作れるようになるポッドキャスト

聞き手:野島慎一郎(ライター)

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