最近増えている子どものプログラミング教室へ潜入
作りだしたのは「月面探査ロボット」!!

小学生の習い事といえば塾にそろばん、水泳に英会話が定番だった。だが近年はプログラミング教室に通う子どもが増えているらしい。中にはパソコンに向かうだけでなく、実際にロボットを組み、それをプログラミングによって動かす過程で「仮説力」や「論理的思考」を養うところもあるという。いったいどんな指導が行われているのだろうか。栃木県宇都宮市にあるロボット・プログラミング教室、「ロボテック宇都宮ベース」をのぞいてみた。

16時30分教室がスタート
説明を受けた後、ロボット制作へ

平日の夕方16時30分。小学校を終えた姉妹が教室にやってきた。今日、この時間の生徒はこの2人。慣れた様子でテーブルにつくと、それぞれ先生がつき説明に入る。今日のお題は「月面探査ロボット」だ。一体何が行われるのだろうか。

先生の説明をまとめると、まずはレゴブロックで月面探査ロボットを作ることが第1段階。第2段階でそれを動かすプログラミングを行う。テーブルの上には大きな紙が敷かれており、10㎝程の間隔でラインが4本引かれている。スタート位置から発進したロボットがその線上2か所に置かれたパーツをショベルで回収し、元の位置に戻るようにプログラミングしようというのが今日の授業内容だ。

先生から話を聞いた2人は早速、ブロックの組み立てに入る。その合間にこの教室の代表の籐貴之氏(44歳)に話を聞いた。
「自分の子どもの習い事を探していた時にプログラミング教室を発見したのです。私はもともとプログラミングの仕事をしていて、その後、独立してWebマーケティングの事業を立ち上げていましたので、これなら自分でもできるのではないかと考えました。ただプログラミングだけではつまらないと思っていたところにレゴ社の製品に出会いました。ブロックで有名なレゴですが、今はとても進化しており、モーターや駆動のパーツ、さらにはCPUやメモリまでついていて、モノづくりとプログラミングの基本が学べます。ぜひこれを子どもたちにやってみて欲しいと思い、2018年にこのロボテックを始めました」

籐氏は工業高校の出身。そこはロボット制作が盛んな学校で、籐氏自身も実際にその制作を経験し、面白さを知っていたことも「ロボットでプログラミング教室を」という思いを後押ししたそうだ。
姉妹はタブレットに表示された設計図通りにブロックを組み立てていく。先生は基本的に口を挟まず、2人は黙々と組み立てていく。その間、約15分。ともに難なくロボットを完成させた。

「小学校低学年では組み立ての設計図がありますが、学年が上にいくと、完成したイメージと動きだけを伝え、設計図のないロボットを組み立てることもあります。そこで自分の考えるロボットを作るのです。例えば“重たい荷物を動かせるロボットを作ろう”というだけで、いくつもの形が考えられます。そこで創造性も養えるのです」

トレーの中には様々なブロックが置かれている。イマジネーションを膨らませれば確かに設計図に頼らなくてもいろいろな形や大きさのロボットが作れそうだ。

16時50分アイコンを並べ、プログラミング開始
ロボットを手に持ちながら試行錯誤

次はいよいよプログラミングに入る。ロボットをまっすぐに進め、パーツにたどり着いたら方向を変えてショベルの中に収める。そして再度、方向を変えて次のパーツに向かい、回収後はスタート地点に戻らなければならない。タブレットにはプログラミング言語がアイコンになって表示されており、それを組み合わせていく仕組みだ。

アイコンは主に3つの指示に色分けされていて、黄色はスタート、繰り返しなどのフローを示すもの。緑色はモーターの動かし方。赤色は音を出したり、ディスプレイに表示させたりなど出力の指示を出すものになっている。今回は主に黄色と緑に色塗られたアイコンを使い、モーターを動かす秒数やモーターの回転する方向を入力しながらプログラミングしていく。

ここからは試行錯誤の連続となった。モーターを動かす秒数が足りなければ、パーツにたどり着く前にロボットは止まってしまうし、回転する方向が間違っていれば、思い通りに曲がってくれない。実際にロボットを手で持ち、具体的にどんな動きを指示していくかをイメージしながらプログラミングを進めている。アイコンの組み合わせのためにコーディングミスがなく、動きを考えることに集中できるのは合理的だ。2人はじっと考えながら、少しずつアイコンを画面上に並べていく。
「こうした試行錯誤で仮説力や論理的思考を学べます。ロボットを動かす利点は実際に動かなかった時、ただのプログラミングを再確認するだけでなく、ロボットの物理的な動きまで考えて機能するかを確認しなければいけないことです。タイヤに部品があたっていれば、当然、ロボットは動きません。手先を動かし、頭を悩ませる機会が増えるのがいいところです」

17時10分、トラブル発生
ロボットから異音が出て、動かない

そう籐氏が語る間にも一人の女の子のロボットから異音が生じ、動かなくなった。モーターは動いても、その力がロボットに伝わっていないようだ。一度、ロボットを解体し、組み立てなおす。先生も一緒になって動きを確認する。しかしアドバイスの声かけは最低限だ。

「この教室ではなるべく教えないということを意識しています。実際、先生役もすべてを理解しているわけではなく、子どもと一緒になって考える場面がほとんどです。そして子どもが見つけた答えを一緒になって検証していきます。指示を待つのではなく、自分で考え行動に移せる習慣を身につけることを狙っています」
なぜロボットが動かないのか。その原因はなかなか分からない。子どもだけの力では限界かと思われたとき、先生と籐氏がトラブル対応に出動。確認したところモーター自体の問題と判明し、それを取り換えることで事態を収拾した。ブロックの組み立てにもプログラミングにも問題がなかったことが分かって、女の子はひと安心。プログラミングを再開した。

17時10分、プログラミングの仕上げ
完成が近づき、安堵の笑顔

ここからは再度、試行錯誤の時間に戻った。少しずつロボットは思い通りに動くようになり、姉妹の顔にも笑顔が見えてくる。それと同時に先生はほとんどアドバイスをしなくなった。どうプログラミングすれば、どうロボットが動くのか。2人は月面探査機を動かすイメージを完全につかんだようである。この過程で仮説を立て、論理や手順を組み立てていくことが学べるというのは確かに理解できる。
ただこれは他の方法でも学べるのではないかという思いも浮かんでくる。例えば料理教室であっても同様のプロセスを踏むだろうし、宇都宮市でも少し足を延ばせば、自然豊かなエリアが広がっている。そこで例えば丸太小屋を作ったり、テントを立てたりなどでも、こうした思考は経験できるはずだ。そんな疑問も素直にぶつけてみる

「その通りです。私は佐賀県の田舎で育ちましたが、毎日、野山でいかに工夫して遊ぶかを考えながら育ってきましたし、その経験が社会に出てから役立っています。ですから実際に次はアウトドア教室もできないかと真剣に考えているほどです。私がプログラミングやロボットに親しんでいたために、この教材を使って指導をしていますが、考える習慣を学ぶ方法は他にもあると思いますよ」
この教室に通わせる目的としてプログラミングができるようになって欲しいと期待する父兄は多いという。もちろんプログラミングの考え方を学ぶことはできるが、それは籐氏にとっての目的ではない。大切なのは自分で仮説を立て、論理的に考えて行動できるようになること。プログラミングもロボットも手段のひとつだと繰り返す。


◇ロボット教室・プログラミング教室のロボテック
宇都宮ベース/栃木県宇都宮市塙田5-2-44
壬生ベース/栃木県下都賀郡壬生町976−7
栃木市ベース/栃木県栃木市倭町6-20
https://robotec.jp/


◇取材・文/赤浦 和

後半は3月17日に公開します。

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