ストリーミングでユニコーンというバンドの曲を流していたら、若い頃の奥田民生の歌声が聞こえてきて、どうも耳覚えがあるけれど何の曲か判らない。
初期ユニコーンの曲で僕が知らないものはないので、不思議に思って確認したら新曲でした。
調べたら、10月に配信されたEP『ええ愛のメモリー』の1曲目『ネイビーオレンジ(AI VOCAL)』 でした。
このEPは、ユニコーンの各メンバーが、自分が以前作った曲を元に「あの頃の自分が作りそうな曲」を制作、自分達の若い頃の声を学習させたAI音声で歌をつける、という企画モノ。
AI=ええ愛、のメモリー。まあダジャレですね。
EPのプロデュースを担当した、メンバーのABEDONのインタビューが印象的でした。
AIで生成された音声が乗せられた曲を聞いて、「これは歌ではない」という印象を持ったそうです。
声はそれっぽいけど、歌じゃない。
ユニコーンのおもしろさ、魅力が出ていない。
「(AIを通じて)ユニコーンを外側から見て、ユニコーンの良さが初めて分かりましたね」
「ユニコーンというバンドは、その『いびつさ』が魅力になっているんです」
ABEDONは各メンバーのついびつさを際立たせることを念頭に、
ピッチをずらす、音程を微妙に外すなど、より不完全なものになるよう仕上げたそうです。
そうして出来上がったものは、本人達が歌ったものとはなんか違うけど、なんかおもしろいものになっています。その「おもしろさ」を出すところ、そこに人の仕事があるのだと思います。AIはツールです。それが現時点の僕の認識です。
ちなみにこのAI音声は、大きなスタジオが時間とお金をかけて制作した音声ではなく、ABEDONの弟子がAIに学習させて作ったものだそうです。
AIの爆発的な発展を後押しする一因には、この「技術へのアクセスの容易さ」があると思います。
前回「感情に訴えるのは人の仕事」で書いたように、やはりAIというツールをいかにおもしろがって使えるか、というところに僕らの価値があると思います。