テレワーク導入に頭を悩ませている管理職の方へ
おすすめの本5冊を選んでみました。/前編

ニューノーマルな働き方では、避けて通れないとも言われる「テレワーク」。
今回の特集は、雑記ライターとして書評を書くことが多い筆者が、テレワーク導入に頭を悩ませている管理職の方におすすめの本を5冊、選んでみました。
筆者は出勤とは無縁ですが、クライアントや営業先からの電話は7割方、固定電話ではなくケータイからかかってくるようになりました。
そんな中、「上司がテレワークに切り替えさせてくれない」「とりあえずテレワークにしたけど問題山積み」といった声を聞くことも。
昨今急増しているテレワーク関連本のなかに、悩みの答えがあるかもしれません。

 目次
  • リアルな内容満載!テレワーク最前線から全体像をつかむ
  • 7社の事例でリアルな声を参考に!
  • ITリテラシーに関わらず、ニュース感覚で読める
  • 法規制のわかりにくい点を、弁護士が的確にアドバイス
  • 政府のテレワーク規則、どこまでお手本にできる?
  • 社員のやる気をあげて業績アップ!オンラインでのチームワーク術を学ぶ
  • 強いチーム作りに大切な「情報のオープン化」とは?
  • 「失敗」は早い段階で共有してトラブル回避
  • リアルな内容満載!テレワーク最前線から全体像をつかむ

    『テレワーク大全』 編集:日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ 価格:2,200円

    テレワークで何から手をつけたらいいのかわからない、先行している会社を参考にしたい……そんな人におすすめなのが『テレワーク大全』です。日経BP系列の本だけあって、取材や時事ネタに基づいた記述が多め。テレワークの最前線を参考にしながら、導入から活用・発展までをまるっと学べます。

    “緊急事態宣言後に実施した約3000人のアンケートでは、テレワークを利用したことがある人が約7割”、“Web会議に必要なのは、ソフトだけでなくスマホ用リングライトが意外と役に立つ”など、メディアらしいページが並びます。

    導入したい、でもIT製品やサービスを購入するお金がない…。そんな人には、60件の無償施策が一目でわかるリストが役に立ちそう。セキュリティを担保したままモバイル端末上で紙の資料を観覧できる「Handbook」など、便利なツールを知るきっかけにもなります。

    7社の事例でリアルな声を参考に!

    注目したいのが、すでにテレワークを導入している7社を取材した事例です。たとえば、横浜市の向洋電機土木では、テレワークをきっかけに社員車での移動を減らして自動車にかかるコストを削減。その費用を社員の資格取得などに回したおかげで業績までアップしたとか。

    社員の手当て問題など、テレワークで発生しそうなメリット、デメリットは、リアルなほうが参考になりますよね。

    ITリテラシーに関わらず、ニュース感覚で読める

    中には、ちょっとキャッチーなページも。「米国のローカル放送局の女性記者が自宅からニュース番組をネット中継している最中に、上半身裸の父親のふくらんだお腹が画面に映り込んでしまった」という実際のハプニングをもとに、“自宅で動画を撮ることのリスク”を伝えようという記事には、クスッと笑ってしまいました…。
    もちろん、こういった身近な話題が、じつはとても参考になったりします。

    読み口がむずかしくなく、ITリテラシーが高くない人でも、「日経ビジネス」や「日経トレンディ」のようなニュース感覚でサクッと読めるテレワーク本。トレンドを押さえつつ、テレワークの知識を一から十まで順序立てて教えてくれる、いわば辞書的な一冊です。

    テレワークの現状を知るためにも、1冊目としての購入をおすすめします!

    テレワーク大全 (日本語) 単行本

    法規制のわかりにくい点を、弁護士が的確にアドバイス

    『テレワーク導入の法的アプローチ-トラブル回避の留意点と労務管理のポイント』 発行:経団連出版 著者:末啓一郎(弁護士) 価格:1,760円

    何が正しくて、何が正しくないのか、まだ曖昧なことが多いテレワーク業務ですが、『テレワーク導入の法的アプローチ-トラブル回避の留意点と労務管理のポイント』があれば、模範的な解答と、法的な立場からの的確なアドバイスを同時に得られます。

    著者は弁護士の末啓一郎さん。法律や権利関係に強い、経団連出版から刊行されています。

    テレワークには「雇用型」と「自営型」があるのをご存知でしょうか? 雇用型は主に会社員、自営型はいわゆる業務提携や請負のこと。本書では、テレワークにまつわる法規制の確認をする前に、この事実を理解することが大事だと綴られています。

    興味深かったのは、政府が示す「テレワークの定義」について言及していること。総務省によると、テレワークとは、「情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと」。それに対し、著者は「本当に柔軟な働き方なのか?」と指摘しています。

    もちろん、会社以外の場所で働くので場所に柔軟性はあるものの、テレワークだからといって時間の柔軟性が高まるわけではナシ。もしそうだとしても、それは場所の柔軟性が増えたことによる副次的なもの。つまり、政府は雇用型と自営型をごっちゃにしているのではないかと。

    たしかに、「テレワーク(テレ=遠い)」は文字通り、「“離れた場所での勤務”が本質」とする著者の意見のほうが、なんだかしっくりきました。こういった独自の視点が、法規制の正しい判断に役立ちそうです。

    政府のテレワーク規則、どこまでお手本にできる?

    テレワーク導入による就業規則の変更については、厚生労働省が提示するテレワークのモデル規則がサンプルになっていますが、服務規則に書かれた「テレワーク勤務中は業務に専念すること」の記述には、「当然すぎるので、不要ではないかと思われる」との指摘が。

    言われてみれば、思わず突っ込みたくなる項目…。かといって外してもいいものかと悩むときには、心強いアドバイスですね。

    他に、自宅や出先でのケガがどこまで労災になるのか、といった項目も興味深かったです。

    全体的に「法的アプローチ」が軸になっていますが、内容自体は専門的というより多岐に渡っているので、入門編として参考にするのも良さそう。図表はほとんど入っていませんが、文章が簡潔でわかりやすいです。

    労務担当の方はもちろん、テレワークの法規制を確認しておきたい知識欲の高い人、より自由に働くためにテレワークのNG事項を知っておきたい人にもおすすめです。

    テレワーク導入の法的アプローチ-トラブル回避の留意点と労務管理のポイント (日本語) 単行本

    社員のやる気をあげて業績アップ!オンラインでのチームワーク術を学ぶ

    『《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方』 発行:扶桑社 著者:藤村能光「サイボウズ式」編集長 単行本 1,650円

    顔の見えにくいテレワークだからこそ、「チームワーク」が大事なのではないでしょうか。

    『《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方』の著者は、人気オウンドメディア「サイボウズ式」の編集長を務める藤村さん。サイボウズ式は、大手ポータルサイトに配信していないにもかかわらず、記事が常にSNSなどで話題になり、熱狂的なファン層に支持されているメディアです。

    そして、著者が所属する「サイボウズ」は、ソフトウェアを制作しながら、個人の自由な働き方と、チームとしての成果の両立を目指す会社。

    上の図表は、2017年にTwitterで拡散されたもの。「午前中在宅で午後から出社」「パリで在宅」「子供を病院に連れて行くので午前お休み」など、まさに時間も場所も拘束されない自立した働き方です。

    自分の会社ではありえない? そうかもしれません。ですが、「リモートワークOK・副業OK」という働き方が特殊ではなくなった今、将来は近い存在になっている可能性もなきにしもあらずです。

    強いチーム作りに大切な「情報のオープン化」とは?

    「未来のチーム」のリーダーがマネジメントで大切にしているのは、オンラインのコミュニケーションツールを使って「情報をオープン化する」こと。

    離れた場所で働いていると、より密なコミュニケーションが求められます。かといって電話やメールをメインにするのは非効率。その点、コミュニケーションツールは気軽にコメントでき、「部下がちゃんと仕事をしているか」ではなく、「どんな気持ちで働いているか」までをしっかりと汲みとれそうです。

    誰かが悩んでいたら「僕も同じ問題でつまずきそうだから一緒に考えよう」と共通の学びを得ることができるし、「前に調べたデータ、使えるかも?」とアドバイスを受けることも。

    これなら、会社に出られないことへのストレスが軽減されるだけでなく、「会社には自分の存在が必要なんだ」という自覚が増しそう。全員参加のツールで、「自分だけ知らなかった…」と社員を不安にさせるような情報格差もありません。

    おのずとチームワークが高まり、業績アップがのぞめるのではないでしょうか。

    「失敗」は早い段階で共有してトラブル回避

    と、ここまでは、すでに実行している会社もあると思いますが、すばらしいのが「失敗もまた共有する」ことです。

    在宅仕事でミスをすると、一人で抱え込んで気を病んでしまいがち。ですが、都合の悪いことこそ、早い段階で共有したほうが、致命的なトラブルに発展しにくいですよね。リーダーから率先して失敗を書き込み、お互いに弱みを受け止めあうことで、社員全員の心理的安全を確保しているとか。会社って、そういう「ほっとできる仲間がいる場所」であってほしいものです。

    一方で、「成功」は上司のものではなく、社員みんなの成果に。「部下を見張る」という感覚ではなく、立場にかかわらず高め合い、上司も部下もある意味で横並びの関係であることが、テレワークでチームを強くする秘訣なのかもしれません。

    IT環境の変化にあわせて、社内のコミュニケーションも変わっていくのが当然。テレワークがうまくいかないのは、意外とチームワークの問題かも!? テレワークの人間関係に悩む人も、ぜひ一読を。

    「未来のチーム」の作り方 Kindle版

    ▼後編はこちら


    ◇文/麻布たぬ
    映画や声優の雑誌編集を経て、フリーライターに。得意分野はエンタメと子育てですが、育児をきっかけに社会への興味が増して守備範囲が拡大中。最近「海の近くに住みたいんだった」と思い立ち、現在は鎌倉市在住。カメラマンの夫、やんちゃ息子と3人暮らし。読む方の「知りたい」を言葉にして、読みやすく伝えることを心がけています。

    後編では、情報セキュリティにくわしい本、テレワークでのモチベーションアップに役立ちそうな本をピックアップします!

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