進化し続けるオンライン地図
知っておきたいMEO対策とこれからのMEO《前編》
パソコンやスマートフォンから位置情報を調べるときに、当たり前のように使うようになったオンライン地図の「Googleマップ」。2005年にベータ版としてリリースされて以来16年。Googleの発表によると2020年現在では毎月世界中の10億人以上のユーザーに利用されているそうです。
ARを駆使したナビ機能「ライブビュー」、店舗などの混雑情報の表示や、施設のクチコミ情報など、機能が次々と追加され、マップ上でできることが大幅に増えました。
常にアップデートを繰り返し、変化し続けているGoogleマップですが、実は使用する側の“人”の行動も大きく変わってきています。
それに伴って飲食業や接客業など、Googleマップ上で検索される側となる事業を営んでいる方は、Googleマップでの表示のされ方にも配慮する必要が出てきました。
今回はGoogleマップをはじめとする「オンライン地図」の歴史や、マップ版のSEOと呼ばれる“MEO”の重要性についてご紹介します。
- 目次
- Googleマップが進化し、Googleマップの使い方も進化した
- Googleマップ上での検索結果を最適化する「MEO」
- MEO対策はSEO対策よりも成果を出しやすい
- 誰でもすぐに始められる! Googleマイビジネスに登録しよう
- GoogleマイビジネスやSNS、各種情報サイトのクチコミを増やそう
Googleマップが進化し、Googleマップの使い方も進化した
Googleマップが公開された当初は、Googleマップ上で検索をするときに「スターバックス」「イオン」などと組織や店舗の名称を入力し、その場所を地図上で確認したり、周辺地図を紙に印刷したり、あくまでも地図として活用することしかできませんでした。
ところが、現在ではGoogleマップ上で例えば「ラーメン」と検索するだけでも現在位置周辺のラーメン屋を表示させることが可能に。しかも表示される情報にはクチコミ情報やメニューなどの写真、営業時間、定休日などの詳細情報も掲載されているため、店選びがGoogleマップ上で完結できるようになりました。<写真1>
さらに、Googleの通常のウェブ検索で「ラーメン」と検索してもGoogleマップでの検索結果が画面上部に表示されるようにもなっています。<写真2>
「食べログ」や「ぐるなび」などの大手グルメ情報サイトよりも上位に、なおかつ地図付きでわかりやすく表示されています。それらの専門サイトよりも自然とGoogleマップをラーメン屋探しに使っているという方が多くなっているのではないでしょうか。
そして、Googleマップがジャンルでの検索を強化し、位置情報を反映した検索結果が表示されるように進化した結果、人の行動も大きく変化しました。
旅行に出かける前にはタウン情報サイトを探したり、ゴルフ場を探す際にはゴルフアプリを入れてゴルフ場の情報を調べたりしていたのに、それらもすべてGoogleマップ上で完結。ホテルや旅館などはGoogleマップ上から料金や空室の検索や予約ページへの遷移までできるようになりました。
インターネットが自宅やオフィスから繋ぐものではなく、“持ち歩けるもの”になった影響も大きいでしょう。スマホがあればいつでも詳細な地図情報や地域の情報を調べられるのですから、もはや印刷された地図を持ち歩く必要性もほとんどなくなってしまいました。
Googleマップ上での検索結果を最適化する「MEO」
Googleマップで情報を検索される側の事業者たちは、自分の店舗や会社がGoogleマップでどのように表示されるのか気にかける必要性が大きくなっています。
Googleマップの検索順位は主に「関連性」「距離」「知名度」といった要素を組み合わせて決定されているそう。これはGoogleからの公式発表で明らかになっています。
ローカル検索結果では、主に関連性、距離、知名度などの要素を組み合わせて最適な検索結果が表示されます。たとえば、遠い場所にあるビジネスでも、Google のアルゴリズムに基づいて、近くのビジネスより検索内容に合致していると判断された場合は、上位に表示される場合があります。
通常のウェブ検索での検索順位を上げる施策のことを「SEO(Search Engine Optimization/検索エンジン最適化)」といいますが、マップに特化した施策のことは近年「MEO(Map Engine Optimization/マップエンジン最適化)」と呼ばれ始めています。
これはローカル検索(地域情報検索)に特化したSEOでもあるため「ローカルSEO」と呼ぶことも多いのですが、2021年6月には日経クロストレンドが「MEO最前線」という特集を組みました。
MEO(マップエンジン最適化)最前線:日経クロストレンド
※有料会員限定記事
特集の記事では牛丼チェーンの「吉野家」や、「すき家」を展開するゼンショーホールディングス、ドラッグストアの「ココカラファイン」などの大きな企業がMEOにも力を入れ始めていることが紹介されています。
MEO対策はSEO対策よりも成果を出しやすい
SEO対策を業者に頼むと高額の費用が必要になるということは、少しでもSEO対策を検討したことがある方ならご存知なのではないでしょうか。
業者の一括比較、見積もりができる発注サイト「アイミツ」に掲載されている「SEO対策の費用と料金相場」によると、初期費用が5万〜20万円、月額費用は固定報酬型で20万〜40万円、1キーワードのあたりの成果報酬型でも1.5万〜30万円とされています。
MEO対策が重要になりつつあるといえど、SEO対策と同じくらいの費用が必要になるのなら手が出せない……。そう思うのも無理はありません。ところが、MEO対策は比較的容易に成果を出しやすいという特性があり、最低限の対策なら業者に依頼せずとも十分です。
例えば、Googleのウェブ検索で「カレーライス」と検索してみましょう。<写真3>
検索結果を見てみると、上から「Google画像検索の結果」「Wikipediaの抜粋」「ローカル検索結果」「カレーライスのレシピ」「カレーライスに関連するニュース」という順番で情報が表示され、さらにはカレーに関するコラム記事やカレールウやレトルトカレーの商品ページなども続き、カレーライスを扱う飲食店の情報がはじめて表示されたのは3ページ目という結果になりました。
もしカレーの専門店を経営していて、自分の店がカレーライスという単語で上位表示されるようにしたいと考えても、これは不可能に近いレベルだといえるでしょう。
ところが、Googleマップ上で「カレーライス」と検索すると、現在位置周辺でカレーライスを取り扱う店舗だけが表示されます。
ローカル検索では最初から地域情報でフィルタをかけた状態で検索をおこなうので、競合となる情報が圧倒的に少なくなります。そのため最低限の対策を講じておくだけでも効果を得やすいのです。
誰でもすぐに始められる! Googleマイビジネスに登録しよう
では、一体どんな対策をすればいいかというと、Googleマップ上にローカルビジネス情報を表示し、管理することができる無料ビジネスツール「Googleマイビジネス」<写真4>に登録することが最重要です。
Googleマイビジネスに登録をしていなくても、Googleマップ上に事業の情報が表示される場合もあります。しかしこれはGoogleが取得してきた情報やユーザーから投稿された情報に基づき表示されているため、必ずしも正しい情報が表示されているとは限りません。Googleマイビジネスに登録することにより、正確な情報をGoogleマップ上に表示させることができるようになります。
そしてGoogleマイビジネスに登録された情報はGoogleに認識され、Googleマップでの検索結果に大きく影響します。正確な位置情報が登録されればローカル検索で正確に表示されやすくなりますし、業種や取扱商品などについても詳しく情報を登録していれば、たくさんの検索キーワードで露出する機会が生まれるでしょう。
また、特に現在はコロナ禍ということもあり、緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置などの発出にあわせて頻繁に営業時間を変える必要があります。ホームページ上や公式SNSがあればそちらで営業時間変更のお知らせを発信することになるかと思いますが、実はそれだけでは不十分。Googleで店舗名を検索するとGoogleマイビジネス上の情報が検索結果一覧ページに表示され、店舗の公式ページを開かずとも営業時間を知ることができるからです。<写真5>
こちらの情報に誤りがあると、店が開いていると思って来店したら時短営業で閉まっていたという事態が起こりかねません。もちろんGoogleマップ上にもGoogleマイビジネスに登録されている営業時間が表示されるため、同様のことが起こり得るでしょう。これだけを考えてもGoogleマイビジネスの登録はしておくべきなのです。
Googleマイビジネスの登録の手順についてはGoogleの公式ページをご確認ください。
ビジネス情報を登録して確認する – Google マイビジネス ヘルプ
登録の手順の中で、なりすましを防ぐための「オーナー確認」という行程があります。こちらはGoogleから登録した住所にオーナー確認用のハガキが届き、登録されている確認コードを管理画面から入力することで確認をおこないます。ハガキは通常14日以内で到着するため、登録しようと思って即座に登録できるものではないということは理解が必要です。
※一部の業種では固定電話やメールでのオーナー確認も可能となっています。
GoogleマイビジネスやSNS、各種情報サイトのクチコミを増やそう
Googleマイビジネスに登録できたら、次にローカル検索での評価を決める要素のひとつ「知名度」を高める必要があります。
Googleによると、ローカル検索における知名度は「ビジネスがどれだけ広く知られているか」と定義され、公式ページでは以下のように解説されていました。
知名度とは、ビジネスがどれだけ広く知られているかを指します。ビジネスによっては、オフラインでの知名度の方が高いことがありますが、ローカル検索結果のランキングにはこうした情報が加味されます。たとえば、有名な博物館、ランドマークとなるホテル、有名なブランド名を持つお店などは、ローカル検索結果で上位に表示されやすくなります。
ビジネスについてのウェブ上の情報(リンク、記事、店舗一覧など)も知名度に影響します。Google でのクチコミ数とスコアも、ローカル検索結果のランキングに影響します。クチコミ数が多く評価の高いビジネスは、ランキングが高くなります。ウェブ検索結果での掲載順位も考慮に入れられるため、検索エンジン最適化(SEO)の手法も適用できます。
つまりインターネット上にどのくらい情報が掲載されているか=知名度として評価され、その量や内容が充実しているほどローカル検索の順位にプラスに作用するということになります。
飲食業なら「ぐるなび」「食べログ」、旅行業なら「トリップアドバイザー」などのクチコミが高評価であるほどGoogleでの評価も高くなり、ブログやSNSでの紹介が多い場合も知名度の評価が上昇します。つまり、来店者がクチコミやSNSに投稿してくれるような仕組みを導入するだけでもMEO対策になっていくのです。
そのなかでももちろんGoogleマイビジネスでのクチコミ評価は重要です。Googleマップでは検索結果をクチコミの評価(ポイント)で絞り込むこともでき、特にスマホ版ではピンと一緒にポイントも表示されます。<写真6>
Googleマイビジネスのクチコミ評価が極端に低かった場合、Googleマップからの流入は期待できなくなってしまうでしょう。クチコミが数多く投稿される仕組みを導入しつつ、なおかつ低い評価が寄せられないように配慮する必要があるのです。
▼後編へ
◇取材協力
ビズガーデニング株式会社
別所沼どうぶつ病院
◇文/野島慎一郎
◇企画・構成/ウェプレス編集部
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後編ではGoogleマイビジネスでクチコミ平均5.0点を達成した店舗や、逆にマイナス評価の対応に悩まされている店舗のインタビューをご紹介。さらにGoogleマップ以外のオンライン地図サービスにも注目していきます。